-
社員が1時間遅刻した場合に、その分、勤務終了の時間を1時間遅くして勤務を命じた場合、この1時間は残業時間になるのでしょうか。
-
結論から申し上げますと法定労働時間である1日8時間を越えなければ残業代の支払いは必要ありません。
労働基準法では法定労働時間 1日8時間労働を超えた部分に対して割増賃金の支払いを義務づけています。
つまり仕事が始まる時間が1時間遅れ、その分仕事を終える時間を1時間遅くしただけでは法定労働時間1日8時間を超えない限り残業代は必要ありません。
ただし、これにはいくつか下記のような注意点があります。
1.1時間の遅刻に対して賃金控除をした場合は、その時間は働く必要のない時間になっていますので1時間遅くまで働かせることはできません。2.就業規則での残業についての規定の確認が必要です。
会社の「時間外労働」とは
・労働基準法でいう実働8時間を越えた時間外労働を指すのか、
・事業場で定めた所定労働時間を越えた時間外労働を指すのか
を確認する必要があります。所定外労働を越えた時間外労働を指す場合は、その超えた時間分については時間外手当の支払いが必要となってきます。
3.終了時間を遅くした結果、労働時間が夜22時~朝5時に及ぶ場合は、「深夜労働」扱いとなり、その分については深夜割増賃金が必要になります。
以上のような点を注意すれば遅刻した時間を残業時間と相殺することは法的に合法と考えられます。
-
当社の労働時間は午前8時〜午後5時まで(うち休憩1時間)となっています。
午前8時〜午後5時までの勤務を終了し帰宅していたのに、業務上の不測の事態が発生したため呼び出されて再出勤する場合、その通勤に要した時間は時間外労働となりませんか?
緊急呼び出しに応じて出勤する途中の災害は、通勤災害ではなく、業務災害となることから考えると時間外労働になるような気もしますが。
-
結論から言いますと緊急呼び出しに応じて出勤するのに要した時間は時間外労働とはなりません。
何故なら通勤時間は、使用者の指揮監督下に入っている時間とは言えないため労働時間ではないからです。
労災保険では、休日で休んでいたり、当日の業務を終了し、いったん帰宅している労働者が、突発ないし緊急用務のために使用者から呼び出しを受け、出勤を命じられて出勤する場合には、出勤しないでよい自由を排し、自己の支配下におくことから、自宅から事業場に向かう途中の災害は、通勤災害ではなく、業務災害となります。
しかし、その実態は一定の時刻までに会社に到達すればよい通勤時間と同じであり、その時間帯が通常の時間帯と異なっているにすぎないものですから、その通勤時間は労基法上の労働時間に該当しません。
以上の理由により、緊急呼び出しで再出勤する場合でも、その出勤に要する通勤時間を時間外労働として時間外手当を支払う必要はありません。
会社に到達し、業務を開始した時間から時間外手当を支払うことになります。
午前8時から午後5時まで(うち休憩1時間)の勤務を終了し帰宅している労働者を業務上の不測の事態が発生したため午後9時より午前1時まで勤務させた場合について、行政解択は「午前8時から午後5時までを所定労働時間としている場合の法第37条の時間外の労働時間計算に当たっては1日の労働時間を通算し8時間を超えた分の時間による。
例えば不測の事態で、午後9時から午前1時までの労働については時間外割増賃金を、又午後10時より午前1時までの労働については深夜割増賃金を支払わねばならない」(昭28・3・20基発第136号)としています。
ご質問の場合、1日の実労働時間は8時間ですから、緊急呼び出しで再出勤した場合でも、業務を始めた時間から時間外手当を支払えばよいわけですが、その再出勤に要した通勤時間に対して何らかの対価ということは考えられます。
緊急呼び出しに応じて出勤するということは、その時間も拘束することになりますので、通常はその拘束性に対する対価(たとえば呼出手当など)が支払われています。
-
1日6時間の短時間契約できてもらっているパートさんがいます。
ある日の業務量が少なかったため2時間切り上げて4時間労働で帰ってもらったのですがこの2時間の部分
についても休業手当を支給する必要があるのでしょうか?
-
結論から申し上げますと休業手当を支給する必要はありません。
何故なら通常の賃金の4/6が支給されこの金額が休業手当で規定する60%を超えているからです。
労基法第26条によりますと
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
としています。
この休業期間には1日のうちの部分的時間も含まれます。
昭27・8・7基収第3445号によりますと
「1日の所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければならないから、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない」
とあります。
今回のケースでは67/100に相当する金額が賃金として支払われますから休業手当の支払いは必要ないとなるわけです。
これが2時間の切り上げではなく会社都合で3時間早く切り上げさせたとしたらどうなるでしょうか?
このケースの場合は休業手当を支払う必要があります。
具体的な例で考察してみましょう。
パートさんの時給を1,000円とします。
通常どおり6時間働いたら賃金は6,000円
今回は3時間で切り上げなので賃金は3,000円カットされて3,000円
となります。
休業手当は通常の賃金の60%を保証しなければなりませんから1日全休させた場合の休業手当は
6,000円 × 0.6 = 3,600円
会社が休業手当として支給しなければならない金額は差額の
3,600円 - 3,000円 = 600円
となるわけです。
-
年金の経過的加算は特別支給の老齢厚生年金の定額部分と老齢基礎年金の差額であると聞きました。
では60~64歳でもらう特別支給の老齢厚生年金に定額部分がなく報酬比例部分のみだった年金受給者
が65歳になった場合には経過的加算はつかないのでしょうか?
-
結論から言いますと経過的加算はもらえます。
a)特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分のみ受け取っていた人も定額部分の計算式を用いて定額部分に相当する額を計算します。
b)国民年金に加入していた期間に応じた老齢基礎年金の金額を計算式を用いて計算します。
経過的加算額 = a) - b)
で求められます。
詳しい計算式についてはブログのほうに載せていますのでご参照ください。
-
弊社で有期雇用で働く契約社員がいます。次回の更新で無期転換権が発生しますが使用者側からこの労働者に対して周知する義務はあるのでしょうか?
-
2023年3月31日までは周知義務はありません。ただし、無期転換権が発生した労働者から申し込みがあった場合は使用者は断ることができません。
厚生労働省の発表によると2021年7月現在において無期転換の申し込み率は3割程度にとどまっており無期転換ルールを知らない有期雇用労働者が多いことをかねてより問題視していました。
2024年4月1日より労働基準法施行規則5条が改正されることになっています。
以下がポイントです。
①無期転換申込機会の明示
・「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※1に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。
※1 初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、今回の改正による無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
②無期転換後の労働条件の明示
・「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
法改正に備えて使用者側も就業規則の改訂や労働条件明示書等の準備が必要となってきますのでご注意ください。
-
月60時間を超えて残業をさせた場合、その超えた部分について50%以上の割増賃金が必要であることは承知していますが代替休暇を与えた場合の割増賃金の計算はどうなるのでしょうか?
-
労働基準法37条1項によると1カ月の時間外労働が60時間を超えた場合について、5割以上の割増賃金の支払いを義務付けています。
ただし、同法37条3項によると労使協定を締結し「代替休暇制度」を設け当該労働者が当該休暇を取得したときは、上記規定による割増賃金を支払うことを要しないとあります。
一見、振替休暇と同様に割増賃金の支払いが必要ないかのように思えてしまいますがそういうことではないので注意が必要です。
上記同法37条3項の割増賃金とはあくまでも60時間超えの50%の割増のことを指しており通常の割増率25%の支払いは60時間超えの部分についても必要となってくるわけです(労基則19条の2)。
具体例をあげて説明しましょう。
ある労働者の所定労働時間を8時間、時間単価を1,000円とします。
この労働者の時間外労働時間が80時間の場合の代替休暇換算してみましょう。
代替休暇 = (80 - 60) × 0.25 = 5時間となり1日(8時間)の代替休暇は取得できません。
※話を単純にするために今回は深夜業を考慮しません。0.25は換算率(1.5 - 1.25)
代替休暇を半日(4H)取得した場合の割増賃金の縮減分は
1,000円 × 20時間 × 0.25 = 5,000円
60時間超え部分の割増賃金は
1,000円 × 20時間 × 1.25 = 25,000円
の支払いが必要です。
いかがでしょうか?
代替休暇制度の目的は「残業代を浮かせる」ことではなく多忙な折に長時間労働や過重労働となった労働者に有給の休日を与えることによって「労働者に十分な休息をとってもらう」ことが目的であることがお分かりいただけたかと思います。
-
弊社で一部、65歳以上の短時間労働者で雇用保険に加入していない従業員がいます。この従業員が副業を始めてマルチジョブホルダーの要件を満たした場合、加入手続きはどうすればよいのでしょうか?
-
雇用保険では、複数の事業所に勤めるときであっても「生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となる」のが原則です。
しかし、2022年1月1日から、特例としてマルチジョブホルダー制度がスタートしています(雇用保険法37条の5)。
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、下記の加入要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から、特例的に雇用保険の被保険者(以下「マルチ高年齢被保険者」といいます。)となることができる制度です。【加入要件】
以下の要件をすべて満たすことが必要です。
①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
②2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であるものに限る。)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。
なお、雇用保険に加入できるのは2つの事業所までです。
また、2つの事業所は異なる事業主であることが必要です。通常の被保険者資格取得届と異なり、届出者はマルチ高年齢被保険者となる従業員本人が本人住所地のハローワークに提出します。
なお、上記②③の要件に合致することを証明するため、両方の事業主が資格取得届の所定欄に記入しなければなりません。
ハローワークに提出後、各事業所宛てに「資格取得確認通知書(事業主用)」が郵送されます。