有期雇用の期間満了による退職は自己都合か会社都合か?

本日のテーマは有期雇用の期間満了による退職の理由が「自己都合」となるのか「会社都合」となるのか、どちらなのかについてお話させていただきたいと思います。

結論から先に申し上げますと「どちらでもない」ということになります。

ご存知の方も多いと思いますがこの離職理由が雇用保険の基本手当(失業手当)を受給できるようになるまでの期間および受給できる期間に大きく影響を及ぼします。

失業して雇用保険の基本手当をもらうための受給要件をまず確認しておきましょう。

  1. ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
  2. 離職の日以前2年間に、被保険者期間(※補足1)が通算して12か月以上あること。
    ただし、特定受給資格者(※補足2)又は特定理由離職者(※補足3)については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。

※補足1  被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月と計算します。

※補足2 特定受給資格者:勤務先の倒産や事業所の廃止、事業所内の大量雇用変動や賃金の未払い、職種転換時の無配慮などで再就職準備のための時間がなく、離職を余儀なくされた退職者

※補足3 特定理由離職者:事務所の移転といった、自己都合退職のなかでも自らの意思に反する正当な理由がある退職者や給付制限のない離職者

受給資格を満たす者がハローワークで求職の申し込みをし7日間の待機期間を経た後に支給されるのが原則となります。

但し、離職理由が正当な理由のない「自己都合」の場合、この7日間の待機期間に加えて更に2か月間基本手当が受給できません。これを「給付制限」といいます。

次に基本手当の所定給付日数です。

基本手当の受給期間は原則1年間ですが雇用保険の加入期間と年齢によって「所定給付日数」が決まっています。

離職して1年の間に「所定給付日数」分の給付を受け取ることができるわけですが離職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって所定給付日数が大きく違っており全体の受給額に大きな差が生まれます。

自己都合退職、特定理由離職者の場合の所定給付日数

会社都合退職、特定受給資格者の場合の所定給付日数

いかがでしょうか?

もしあなたが50歳で失業し雇用保険の加入期間が20年以上ある場合、会社都合だと330日分もらえるはずの基本手当が自己都合だと150日分しかもらえなくなってしまうのです。

では、基本手当の日額は一体いくらなのでしょうか?

令和5年7月26日付けの官報によりますと最近の物価高騰を考慮して令和5年8月1日から基本手当日額が引き上げられるようです。

〇基本手当日額の最高額の引き上げ

 基本手当日額の最高額は、年齢ごとに次のようになります。

 ①60歳以上65歳未満 旧:7,177円 → 新:7,294円(+117円)

 ②45歳以上60歳未満 旧:8,355円 → 新:8,490円(+135円)

 ③30歳以上45歳未満 旧:7,595円 → 新:7,715円(+120円)

 ④30歳未満      旧:6,835円 → 新:6,945円(+110円)

〇基本手当日額の最低額の引き上げ

 旧:2,125円 → 新:2,196円(+71円)

では、具体的にあなたが50歳、雇用保険加入期間が20年以上の場合の基本手当の受給総額を計算してみましょう。

自己都合退職の場合

受給総額 = 8,490円 × 150日 = 1,273,500円

会社都合退職の場合

受給総額 = 8,490円 × 330日 = 2,801,700円

何と150万以上の差となってしまうわけです。

さて、話を本題に戻しまして有期雇用の契約期間満了による退職の場合はどうなるのでしょうか?

これは以下要件によって変わってきます。

・通算の雇用期間が3年以上だったかどうか。
・契約開始前に契約満了後の契約更新の有無の通知があったかどうか。
・従業員から契約更新の希望があったかどうか。

表にすると以下のようになります。

いかがでしょうか?

有期雇用契約で就業されている方、受給総額や待期期間に大きな差が出ますので自分がどのパターンにあてはまるのか、労働条件通知書などをよくみて、上記表を参照しながらご自分が「特定受給資格者」「特定理由離職者」「受給資格者」のどれに該当するのかよく確認しておきましょう。

労働条件通知書の交付を受ける場合は労働条件について使用者とよく話し合ってサインするようにしてくださいね。

本日のブログはここまで。

「有期雇用の期間満了による退職は自己都合か会社都合か?」についてでした。

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