割増賃金の基礎となる賃金とは?(年俸者の場合)
本日のテーマは前回に引き続き「割増賃金の算定基礎となる賃金とは?」の年俸者編です。
前回のブログでは月給制、日給制、時給制の労働者の割増賃金について算定の基礎となる賃金、除外される賃金についてお話しました。
では、年俸制の労働者の場合はどうでしょうか?
経営者の方の中には年俸制で契約している労働者には割増賃金を支払う必要はないと勘違いされている方も多くいらっしゃいます。
これは大きな間違いで労働基準法上、年俸制は月給制と同等に扱われます。
即ち、一般的に年俸制であっても法定労働時間超えの労働に対して割増賃金を支払う必要があるのです。
上記で一般的にと申し上げたのは例外があるからです。
その例外とは以下のすべてを満たす必要があります。
- 年俸(月額)の内、残業手当(割増賃金)として支払っている金額を具体的に明示していること
- 年俸(月額)には定額の残業手当(割増賃金)を含むこと、及び、その内訳について、従業員本人から同意を得ていること
- 実際の残業時間に基づいて計算した残業手当の額が、定額で支払っている残業手当の額を超えたときは、超えた差額を支払うこと
- 最低賃金をクリアしていること
- 年俸者の割増賃金の取扱いについて、就業規則(賃金規程)に記載されていること
次に年俸者の割増賃金の算定基礎となる賃金についてです。
年俸者の場合、割増賃金の算定基礎として「賞与」を含めるか除外するのかが悩ましいところです。
一般的に賞与は年に2回、6月と12月に支給するなどとなっている企業も多いかと思います。
前回のブログで労働基準則21条では割増賃金の算定基礎から除外できるものとして「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」というものがありました。
結論から申し上げますと年俸制の場合、賞与を割増賃金の算定基礎に含むかどうかはケースバイケースとなります。
以下のケースで考察してみましょう。
①年俸額を決定し、その年俸の16分の1を月給として支給し、16分の4を2回に分けてして6月と12月に賞与として支給するケース
このケースの場合は賞与を割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。
昭和22年9月13日基発第17号によると
「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと」
とされ更には平成12年3月8日基収第78号によりますと
「年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は『賞与』に該当しない。したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある」
とされているため割増賃金の算定基礎となる賃金に、通常、除外される年2回の賞与も含めることになります。
②月給部分のみ年俸制にし、賞与は別途、勤務成績などを考慮して決定する場合
このケースにおいては賞与額は予め確定していないので賞与は割増賃金の算定基礎から除外することができます。
いかがでしたか?本日はここまで。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。